「相続放棄を考えているけど、故人の車はどうなるの?」「放棄した後に車を処分しても大丈夫?」
こうした疑問を抱える方は少なくありません。
相続放棄と車の取り扱いには、知っておかないと取り返しのつかない法的リスクがあります。
この記事では、相続放棄した場合に車がどうなるか、処分してはいけない理由、そして正しい対処法をわかりやすく解説します。
相続放棄すると、車を含むすべての財産を放棄することになる
結論からお伝えすると、相続放棄をした場合、車を含む故人の財産すべてを引き継ぐ権利を失います。
そして最も注意すべき点は、相続放棄の前後に車を勝手に処分(売却・廃車・名義変更など)すると、「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があるということです。
単純承認とは?
相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合、相続を承認したとみなされる制度です(民法921条1号)。一度単純承認が成立すると、相続放棄はできなくなります。
つまり、借金などマイナスの財産を避けるために相続放棄を検討しているのに、車を処分したことで放棄できなくなり、結果的に借金を背負ってしまうリスクがあるのです。
相続放棄とは
相続放棄とは、家庭裁判所に申述することで、故人(被相続人)の財産・債務の一切を引き継がない意思表示をする手続きです。
相続放棄の主なポイント
- 期限:相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要がある
- 効果:プラスの財産(預貯金・不動産・車など)もマイナスの財産(借金・ローンなど)も一切引き継がない
- 撤回不可:一度受理されると原則として撤回できない
- 個人単位:相続人ごとに判断でき、全員が放棄する必要はない
借金や保証債務など、マイナスの財産が大きい場合に選ばれることが多い手続きです。
相続放棄後に車を処分できない理由
相続放棄をした(またはこれからする予定の)方が車を処分できない理由は、主に以下の3つです。
理由1:単純承認とみなされるリスク
先述のとおり、相続財産である車を売却・廃車・名義変更するなどの「処分行為」を行うと、民法921条により相続を承認したとみなされるおそれがあります。
相続放棄の申述前はもちろん、申述後であっても、相続財産を隠匿・消費した場合は放棄が取り消される可能性があります(民法921条3号)。
理由2:他の相続人や債権者の権利を侵害する
相続放棄をすると、放棄した人は最初から相続人ではなかったことになります。つまり、車は他の相続人や、最終的には債権者のための財産です。
それを勝手に処分すれば、他の相続人の権利を侵害するだけでなく、債権者から損害賠償を請求されるリスクもあります。
理由3:保存行為を超えた行為は認められない
相続放棄をした人にも、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまでの間、財産を適切に管理する義務(保存義務)があります(民法940条)。
ただし、認められるのはあくまで「保存行為」(現状を維持するための行為)のみです。売却や廃車は保存行為を超えるため、行ってはいけません。
保存行為として認められる例
・車を屋根のある場所に移動して劣化を防ぐ
・盗難防止のための施錠管理
・車検切れにならないよう最低限の手続き
保存行為を超える(認められない)例
・車を売却する、廃車にする
・自分の名義に変更する
・車を自分の用途で日常的に使用する
相続放棄した車の正しい対処法
では、相続放棄をした後、車はどうすればよいのでしょうか。状況に応じた正しい対処法を解説します。
対処法1:次順位の相続人に引き継ぐ
相続放棄をすると、相続権は次の順位の相続人に移ります。
- 第1順位:子(放棄した場合)→ 第2順位:父母・祖父母
- 第2順位が放棄 → 第3順位:兄弟姉妹
次順位の相続人がいる場合は、その方に車の管理を引き継ぐのが基本です。相続放棄した旨を伝え、車の保管場所や鍵などの情報を共有しましょう。
対処法2:相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てる
すべての相続人が相続放棄をした場合、相続財産を管理・処分する人がいなくなります。この場合は、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てます。
相続財産清算人が選任されれば、その人が法的に正しい手続きで車を含む相続財産を処分してくれます。
家庭裁判所に申立て
故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続財産清算人選任の申立てを行います。
清算人が選任される
裁判所が弁護士等を相続財産清算人として選任します。
清算人が財産を管理・処分
清算人が車を含む相続財産を適切に管理し、必要に応じて売却・換価して債権者への弁済等を行います。
※ 申立てには費用(収入印紙800円+予納金)がかかります。予納金の額は裁判所や案件によって異なりますので、事前に管轄の家庭裁判所に確認してください。
対処法3:車の引き渡しまで適切に保管する
次順位の相続人や清算人に引き渡すまでの間は、車を適切に保管する義務があります。
- 風雨を避けられる場所で保管する
- 鍵を適切に管理する
- 車が他者に損害を与えないよう注意する
放置して車が劣化したり第三者に損害を与えた場合、管理義務違反を問われる可能性があるため注意が必要です。
相続放棄する前に知っておくべきこと
相続放棄は撤回できない重要な判断です。後悔しないためにも、放棄を決める前に以下の点を確認しておきましょう。
車の価値を事前に把握する
相続放棄をすると、車がたとえ高額であっても手放すことになります。放棄する前に、車にどの程度の価値があるか把握しておくことは、判断材料として重要です。
当社では、相続車の無料査定を承っています。「放棄するかまだ迷っている」「車の価値だけ先に知りたい」という段階でもお気軽にご相談ください。査定したからといって、売却の義務は一切ありません。
車の価値を確認してみる(無料査定)→プラスの財産とマイナスの財産を整理する
相続放棄が本当に最善かどうかは、財産全体のバランスを見て判断する必要があります。
- 預貯金・不動産・車などプラスの財産の合計
- 借金・ローン・保証債務などマイナスの財産の合計
マイナスがプラスを大きく上回る場合は相続放棄が有力ですが、車の価値が思ったより高ければ、限定承認など別の選択肢も検討の余地があります。
3か月の期限に注意する
相続放棄の申述期限は「相続の開始を知った日から3か月以内」です。この期間は「熟慮期間」と呼ばれ、期限を過ぎると原則として放棄できなくなります。
迷っている場合は、早めに弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。熟慮期間の延長を家庭裁判所に申し立てることも可能です。
よくある質問
相続放棄した後、車の駐車場代は払い続けなければなりませんか?
相続放棄後も、次の管理者(次順位の相続人や相続財産清算人)に引き渡すまでは保存義務があります。駐車場の契約自体は相続財産の管理に関わるため、状況に応じて判断が必要です。具体的な対応は弁護士にご相談ください。
車の価値が低い(数万円程度)場合でも、処分すると単純承認になりますか?
車の価値が経済的に見てわずかな場合は、処分しても単純承認にあたらないとする裁判例もあります。ただし、「わずか」かどうかの判断は難しく、後から争われるリスクもあるため、自己判断で処分するのは避けるのが安全です。
相続放棄する前に車の査定だけ受けても問題ありませんか?
はい、査定を受けるだけであれば「処分行為」にはあたらないため、単純承認とみなされる心配はありません。車の価値を把握した上で、放棄するかどうかを判断することは合理的な行動です。
故人の車のローンが残っている場合、相続放棄すればローンも引き継がなくて済みますか?
はい、相続放棄が家庭裁判所に受理されれば、車のローンを含む一切の債務を引き継ぐ必要はなくなります。ただし、車の所有者がローン会社名義の場合、ローン会社が車を引き揚げることがあります。
まとめ
相続放棄を検討している場合、車の取り扱いには細心の注意が必要です。
- 相続放棄すると車を含むすべての財産を放棄することになる
- 車を勝手に処分すると単純承認とみなされ、放棄できなくなるリスクがある
- 正しい対処法は、次順位の相続人への引き継ぎ、または相続財産清算人の選任
- 放棄を決める前に、車の価値を含めた財産全体の把握が重要
「放棄すべきか迷っている」「車の価値だけ先に知りたい」という段階でも構いません。
まずは今の状況をお聞かせください。
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一人で悩まなくて大丈夫です
「放棄すべきか迷っている」「車の価値だけ知りたい」という段階でもご相談いただけます。
まずは今の状況をお聞かせください。一緒に整理するところから始めましょう。
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